大島弓子「バナナブレッドのプディング」
Sさんから借りた白泉社文庫の「バナナブレッドのプディング」には、表題作のほかにも「ヒー・ヒズ・ヒム」「草冠の姫」「パスカルの群れ」といった短編も収められていて、どれも一貫して登場人物たちががんばっているのは、たとえば同性の恋愛は可能かとか、性を変えることで恋愛は可能かとか、異性どうしの恋愛はそもそも可能かといったような例題をきっかけに、誰もが生まれつき持ってしまった性から、このどうしようもない生きづらさを解決する方法を探っているということだ。そして、それらの例題がどれも成就しなかったとしても、というかもう途中からどうでもよくなって少女漫画の詩的なページでなにもかもうやむやになってしまっても、物語の最後にはみんなちょっとは生きやすくなっているように見えるから、すてきだ。
その夜ひと晩 ノートに 彼女の奇妙な 行動と言動を かきだしてつなぎあわせて 今までの なりゆきと 系統づけようとした
友人Aのように わからないままに するのが いやだったので
結局 わからなかった
「このどうしようもない生きづらさ」はそれぞれが感じていることで、他の人にはわからない。わたしとあなたはいつまでもわかりあえないけど、わからないことをわからないままに受け止めて、関係はつづいていく。ゲラゲラ笑いながらそんなことあるわけないでしょ?と思わずにはいられない、漫画のなかのたくさんのユーモアあふれるエピソードは、わからないことを受け止めるために必要な手続きなんだと思う。すっごく面白かった。 #本
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