乾久美子「そっと建築をおいてみると」
私にとって建築とは、それをおくことで世界を更新するようなものではなく、そのなかに世界の新しい表情をみつけるようなものだ。私は、建築をおくことをとおして私たちのまわりにひっそりとひそんでいる秩序みたいなものをできるだけたくさんみつけ出したいと思っている。
デザインするということはどういうことなのか?という問いに僕が回答するなら、問題を解決することだと思う。だなんて、ろくにデザインできないくせに言えたものじゃないと思うけど、著者の建築設計事務所に寄せられた依頼のなかから本当に解決するべき課題を見つけ出してアイディアを提案していく、この本の淡々と事例を紹介する文章を読んでいると、グラフィックも建築も映像もウェブも関係なく、ジャンルを超えた普遍的な「デザインをする」というなにかがやっぱりあるんだなと思う。そして、そんなデザインをするためには、いまここで何が起きているのかを見つめるまなざしが必要なんだとも思う。
だから、デザインができない僕は、いま僕に任されている仕事の本当の問題をちゃんと見つめて、もっとたくさん発見して、ひとつずつ驚くところからはじめなければいけないのだと思う。 #本
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