本ぶろ

吉野朔実「少年は荒野をめざす」

1987年に描かれた少女漫画。いろんなことがベタで、過剰に感傷的で、「痛い」って感じ。例えば、こんな台詞があって…

もっと どこかにめちゃくちゃ楽しい事があるんじゃないかとか
毎日 学校と家を往復するだけなら私じゃなくてもいいんだしとか 考える
出席番号と名前以外に私を他人と区別するものなんて ないのよね
…誰が 明日いなくなっても 世界は変わらないよな
という事は 日頃 考えないようにしているんだよ 俺
生きてるのがムダな気がしちゃう(あーやだやだ)

こんなの「痛い」でしかない。でも、そんな痛さを感じられるのも、よくわかるからだと思う。理解できるからこそ恥ずかしい。直視しないようにしているけど、いつもこんなことばっかり考えているんじゃないのか?

雨上がりの夜は 星が尖る 月が尖る
その二等辺三角の光は 柔らかい肌に 突き刺さり
闇は 切り抜かれて 足下に落ちる
影を拾おう 追いかけよう
月光を踏み散らして 一晩中遊びつづけよう

ああ、とてもよくわかります。

そんな「痛い」世界観のなかで、男の子と女の子は付き合うか付き合わないかの2択しかない。はたから見てもじゅうぶん優しい世界だと思うけど、ふたりは過剰に感傷的だから、つらくて生きられないなら死ぬしかない。でも死ぬのはやっぱり怖いから、電車のホームから飛び降りてみても反対側の線路だったりする。

ふたりが死に場所を探してるシーンになって、いままで恋人か恋人じゃないかしかなかった関係性から、なにか別のよくわからない人たちにだんだん変わっていくところがおもしろい。その第3の関係性を見つけるということが、思春期の終わりというか、子供から大人へ成長するっていうことなんじゃないのかなと思った。 #本

7

鏡と短歌

「手紙魔まみ」の文庫版を買ったあと、松屋で牛丼を食べてたら舌に違和感を感じた。会社に戻って鏡を見ると、まっくろでぶよぶよな血の塊が舌の裏にはりついているのが見えた。

甘い甘いデニッシュパンを死ぬ朝も丘にのぼってたべるのでしょう

この歌を読んでから、チョコレートが入ってるような甘いパンが、なんとなく好きになった。

赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、きらきらとラインマーカーまみれの聖書

複数人で Google ドキュメントを編集してるとき、この歌をよく思い出す。

夢の中では、光ることと喋ることはおなじこと。お会いしましょう

二子新地に着くと雨が降ってた。家に帰って鏡を見ると、ヘルメットみたいな気持ち悪い髪型のぼさっとした自分が見えた。 #本

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短歌

笹井宏之という歌人を知った。
「えーえんとくちから」という作品集の最初の句から引用すると、

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい

なんてすごい短歌なんだ。いったいこれはなんなんだ。
こんなのもある。

このケーキ、ベルリンの壁入ってる?(うんスポンジにすこし)にし?(うん)

にし…。

笹井宏之が短歌を作りはじめたのは22歳らしい。初めての歌集を出版したのが25歳。26歳で心臓マヒで亡くなってしまった。

両親が出会ったという群青の平均台でおやすみなさい

短歌はおもしろいなあ。短歌を読むと、やっぱり自分は言葉が多すぎると思う。必然性があって配置された言葉は光ってるよな〜。 #本

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